日本政府観光局(JNTO)が2026年2月18日に発表した「2026年1月訪日外国人数(推計値)」は3,597,500人となり、前年同月比4.9%減となりました。数字だけを見ると減少ですが、その内訳を見ると今回の動きは単純な需要失速ではないと言えます。
最大の要因は中国市場の▲60.7%減(385,300人)です。前年は1月下旬から旧正月(春節)が始まっていたのに対し、今年は2月中旬へずれたことに加え、中国政府による日本への渡航注意喚起や航空便減便の影響が重なりました。政策・供給要因の影響を強く受ける中国市場の特性が、そのまま全体数字に反映された形です。
しかし、ここで止まるのは早計です。
韓国110万人突破が示す「多極化」の進行
※本グラフは転載可能です
同月、韓国は1,176,000人(+21.6%)となり、全市場で初めて単月110万人を突破しました。台湾(+17.0%)、豪州(+14.6%)、米国(+13.8%)、カナダ(+13.5%)も堅調に増加し、17市場で1月として過去最高を更新しています。
つまり今回の1月は、
ではなく
と読む方が本質に近いはずです。
かつての日本インバウンドは「中国の動向次第」と言われました。しかし現在は、韓国・台湾・北米・豪州といった複数市場が同時に成長する多極型構造へと移行しています。
市場別に見る1月の特徴

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韓国:航空供給増×短期高頻度モデル
釜山~福岡などの増便、スクールホリデー需要が後押ししました。韓国は航空供給の増減が即座に数字へ反映される市場であり、訪日需要の“即応性”が高いのが特徴です。
台湾:成熟リピーター市場の安定成長
航空増便とスノーシーズン需要が寄与。地方分散も進み、安定した底堅さを示しています。
中国:規模は大きいがボラティリティが高い
政策・外交・航空供給の影響を強く受ける構造が改めて顕在化しました。潜在需要が消えたわけではなく、環境次第で反発する市場です。
豪州・北米:高単価×シーズン明確型
ウィンタースポーツ需要が牽引。滞在日数・消費単価ともに高く、地方誘客との相性も良好です。
今回のデータが示す3つの示唆
①中国依存モデルからの脱却が進行
中国減少にもかかわらず、全体が350万人台を維持している点は象徴的です。単一市場依存リスクは確実に低下しています。
②成長エンジンは「韓国+長距離市場」
韓国の圧倒的ボリュームと、北米・豪州の高単価市場が同時に伸びる構図は、消費額拡大という政府目標とも整合的です。
③施策は“市場別最適化”へ
中国・香港・韓国を一括りにする時代は終わりつつあります。航空供給、政策リスク、休暇タイミング、消費特性を踏まえた市場別戦略が不可欠です。
総括:減少ではなく「再配分」の月
前年同月比▲4.9%という見出しだけを見るとネガティブに映りますが、実態は「中国の一時的減少×その他市場の同時拡大」という再配分型の動きでした。
訪日インバウンドは今、「量の拡大」から「構造の強化」へと移行している局面にあります。
2026年は、中国の回復有無だけでなく、多極型成長をいかに安定軌道に乗せるかが鍵となりそうです。
※本グラフは転載可能です
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