日本政府観光局(JNTO)が2026年9月16日に発表した「2026年8月の訪日外客数(推計値)」によると、8月の訪日外国人数は3,098,900人となり、前年同月比で9.6%減となりました。
また、2026年1月〜8月の累計は2,762万6300人となり、前年同期比で2.7%減となりましたが、単月の落ち込み幅(9.6%減)と比べると累計の減少幅は限定的にとどまっています。
また、2026年1月〜7月の累計は2,452万7,200人となり、前年同期比1.7%減と、中国の大幅な落ち込みが依然として全体を押し下げています。
前年同月比マイナスの最大の要因は、**中国からの訪日外客数の急減**です。中国政府による日本への渡航に関する注意喚起や航空便の減便が重なり、前年同月比59.0%減の418,000人となりました。
一方で、韓国・台湾・香港・マレーシア・インドネシア・インド・米国・メキシコ・フランス・イタリア・スペイン・ロシア・北欧地域・中東地域の14市場で8月として過去最高を記録し、そのうちイタリア・スペインは単月として過去最高を更新しています。
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国・地域別に見ると、以下のような傾向が見られます。
韓国
韓国からの訪日外客数は850,500人で、前年同月比28.7%増となり、8月として過去最高を記録しました。台風による航空便への影響もあったものの、継続する訪日旅行人気に加え、スクールホリデーや航空座席数の増加が押し上げ要因となりました。累計でも742万人(+21.2%)と、韓国市場の勢いは年間を通じて衰えていません。
中国
中国からの訪日外客数は418,000人で、前年同月比59.0%減と大幅な落ち込みとなりました。中国政府より日本への渡航を避けるよう注意喚起があったことに加え、航空便の減便の影響が重なりました。スクールホリデーの需要はあったものの、政策・供給要因がそれを大きく上回る形となり、2026年に入ってから一貫して続く中国市場の構造的な低迷が、8月も継続した格好です。
台湾
台湾からの訪日外客数は666,000人で、前年同月比7.3%増となり、8月として過去最高を記録しました。台風による航空便やクルーズ船への影響があったにもかかわらず、継続する訪日旅行人気とスクールホリデー、航空座席数の増加がそれを上回りました。累計では540万人(+19.8%)に達しており、台湾市場の安定した強さが際立ちます。
香港
香港からの訪日外客数は247,300人で、前年同月比9.4%増となり、8月として過去最高を記録しました。台風の影響があったなかでも、スクールホリデー需要と航空座席数の増加が下支えしました。
タイ
タイからの訪日外客数は32,200人で、前年同月比9.3%減となりました。夏場は訪日需要が落ち着く時期であるうえ、前年にあった特別休日による4連休の反動に加え、航空便の減便や訪中旅行の継続的な人気の影響も重なりました。
シンガポール
シンガポールからの訪日外客数は21,600人で、前年同月比5.3%増となりました。訪中旅行の継続的な人気という逆風がありつつも、祝日やシンガポール〜那覇間の復便(2025年12月)、継続する訪日旅行人気が押し上げ要因となりました。
マレーシア
マレーシアからの訪日外客数は26,000人で、前年同月比23.0%増となり、8月として過去最高を記録しました。訪中旅行の人気という競合要因があるなかでも、スクールホリデーや祝日、継続する訪日旅行人気が需要を大きく押し上げました。
インドネシア
インドネシアからの訪日外客数は32,500人で、前年同月比3.4%増となり、8月として過去最高を記録しました。祝日と継続する訪日旅行人気が寄与しています。
フィリピン
フィリピンからの訪日外客数は39,100人で、前年同月比11.6%減となりました。祝日の並びが前年と比べて悪かったことに加え、航空便数の減少が影響しました。
ベトナム
ベトナムからの訪日外客数は56,600人で、前年同月比7.5%減となりました。スクールホリデーや8月末の連休、ハノイ〜静岡間の新規就航(2026年4月)といったプラス材料がありながらも、訪中旅行の継続的な人気が上回りました。なお、留学・技能実習等を含むその他客の多い市場である点には留意が必要です。
インド
インドからの訪日外客数は19,500人で、前年同月比4.7%増となり、8月として過去最高を記録しました。デリー〜成田間(2026年1月)、ムンバイ〜羽田間(2026年6月)と相次ぐ新規就航が、継続的な需要押し上げ要因となっています。
豪州
豪州からの訪日外客数は38,200人で、前年同月比7.4%減となりました。継続する訪日旅行人気はあるものの、現地の物価上昇等による海外旅行そのものの抑制傾向が上回りました。
米国
米国からの訪日外客数は197,400人で、前年同月比1.5%増となり、8月として過去最高を記録しました。8月は本来訪日需要が落ち着く時期にあたりますが、継続する訪日旅行人気とスクールホリデーがプラスを確保しました。
カナダ
カナダからの訪日外客数は50,600人で、前年同月比1.8%減となりました。夏場は需要が落ち着く時期であるうえ、前年9月月初にあった祝日のずれによる影響もありました。
メキシコ
メキシコからの訪日外客数は18,600人で、前年同月比37.0%増となり、8月として過去最高を記録しました。継続する訪日旅行人気に加え、スクールホリデーが大きく寄与しています。
英国
英国からの訪日外客数は36,600人で、前年同月比0.2%減となり、ほぼ前年同月並みとなりました。継続する訪日旅行人気はあるものの、夏場の需要が落ち着く時期であることが影響しました。
フランス
フランスからの訪日外客数は40,300人で、前年同月比8.4%増となり、8月として過去最高を記録しました。継続する訪日旅行人気とスクールホリデーが押し上げ要因です。
ドイツ
ドイツからの訪日外客数は33,700人で、前年同月比5.5%減となりました。継続する訪日旅行人気があるなかでも、一部の州で前年より早く8月中旬までにスクールホリデーが終了したことが影響しました。
イタリア
イタリアからの訪日外客数は47,300人で、前年同月比15.1%増となり、単月として過去最高を記録しました。継続する訪日旅行人気に加え、スクールホリデーやバカンスシーズンが大きく寄与しています。
スペイン
スペインからの訪日外客数は36,500人で、前年同月比14.1%増となり、単月として過去最高を記録しました。スクールホリデー・バカンスシーズンに加え、マドリード〜成田間の増便が押し上げ要因となりました。
ロシア
ロシアからの訪日外客数は14,400人で、前年同月比10.4%増となり、8月として過去最高を記録しました。ウクライナ侵攻に伴う各国からの制裁の影響が続くなかでも、スクールホリデーや経由便の多様化、クルーズ船の寄港が需要を支えました。なお、欧州地域全体では、ウクライナ情勢に伴う飛行ルート変更によるフライト時間の増加が、訪日旅行の懸念材料として挙げられている点にも留意が必要です。
北欧地域(スウェーデン・デンマーク・ノルウェー・フィンランド)からの訪日外客数は9,400人で、前年同月比3.9%増となり、8月として過去最高を記録しました。継続する訪日旅行人気に加え、ヘルシンキ〜関西間の増便が寄与しています。
中東地域(イスラエル・トルコ・GCC6か国)からの訪日外客数は22,900人で、前年同月比24.8%増となり、8月として過去最高を記録しました。継続する訪日旅行人気に加え、一部路線の再開・増便、スクールホリデーが押し上げ要因となりました。
中国を除いた市場だけで見ると、8月の訪日外客数は前年同月比で約11.3%増(268万人→268万900人)と、力強い伸びを見せています。しかし中国単独の減少幅(約60万人減)が、他のすべての市場の増加分(合計約27万人増)を上回ったため、全体では9.6%減という結果になりました。これまでの「中国の減少を他市場が吸収して全体はプラスを維持する」という構図が、ついに数の上で通用しなくなった月と言えます。単一市場への依存リスクは、母数が大きいほど全体への影響も大きくなることを改めて示す結果です。
全体数字がマイナスとなった一方で、韓国・台湾・香港・マレーシア・インドネシア・インド・米国・メキシコ・フランス・イタリア・スペイン・ロシア・北欧地域・中東地域の14市場は8月として過去最高を更新しました。継続する訪日旅行人気、スクールホリデー、円安基調という共通の追い風が、中国以外の幅広い市場で需要を押し上げています。
単月の落ち込み(9.6%減)だけを見ると弱含みに映りますが、2026年1月〜8月の累計では2.7%減と、下げ幅は大きく縮小します。年前半の中国の落ち込みが緩やかだった時期を含むこと、そして中国以外の市場が累計で14.1%増という高い伸びを維持していることが、累計ベースでの底堅さを支えています。
2026年8月の結果は、見出しの「9.6%減」だけを見るとネガティブな印象を受けますが、実態は「中国の政策・供給要因による急減」と「その他市場の堅調な拡大」という、これまで以上にコントラストの強い二極化の月でした。
中国以外の14市場が8月として過去最高を記録している事実は、日本の観光競争力そのものが揺らいでいるわけではないことを示しています。むしろ、特定市場への依存度が高いままだと、全体数字が政策リスクに左右されやすいという構造的な課題が、より鮮明になったと言えそうです。
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