日本政府観光局(JNTO)が2025年11月18日に発表した「2025年10月の訪日外客数(推計値)」によると、10月の訪日外国人数は3,896,300人となり、前年同月(3,312,193人)比で17.6%増と大きく伸び、10月として過去最高を更新しました。
国・地域別の訪日外客数を見ると、中国が71.6万人(22.8%増)、韓国が86.7万人(18.4%増)、台湾が59.6万人(24.4%増)と、東アジアの主要市場が堅調に伸びています。また、米国が33.6万人(20.6%増)、オーストラリアが9.6万人(6.7%増)など、欧米豪市場でも10月としての過去最高を記録しました。
一方で、香港(19.6万人、前年同月比 -1.4%)やタイ(12.6万人、-4.8%)など、一部市場では前年割れとなった地域も見られました。
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紅葉シーズンの開始にあたる10月は、もともと訪日需要が高まる時期です。特に欧米豪・中東地域では、次のような要因が訪日客増加に寄与しました。
たとえば、ドイツ(5.6万人、29.2%増)、スペイン(2.9万人、22.7%増)、英国(6.3万人、22.6%増)などは、いずれも10月として過去最高を記録しました。
2025年1月〜10月の累計訪日外客数は3,554万7,200人となり、前年同期比で17.7%増となっています。これはコロナ禍以降の急回復を裏付けるものであり、第4次観光立国推進基本計画が掲げる「地方誘客促進」「消費額拡大」に向けた重要な基盤とも言えます。
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2025年10月の韓国からの訪日外客数は867,200人で、前年同月比18.4%増となり、10月として過去最高を記録しました。清州〜那覇間の新規就航や、釜山〜新千歳・釜山〜長崎間の増便など、航空座席供給の拡大が需要を下支えしました。秋夕(チュソク)連休が10月上旬にあたったことで、連休を活用した短期旅行が活発化。韓国市場はもともと短期・リピート型旅行が中心で、航空路線の利便性が訪日動向に大きく影響します。円安も続いており、ショッピングやグルメを目的とした訪日旅行が堅調に推移しました。一方で、他地域に比べ訪日回数が多い成熟市場であるため、伸び率は比較的安定的です。
台湾からの訪日外客数は595,900人で、前年同月比24.4%増となり、10月として過去最高を記録しました。台北桃園〜福岡間の増便や、台北桃園〜神戸間のチャーター便など、地方路線の航空供給強化が功を奏しました。加えて、10月には3連休が3回あったことから、ファミリーやグループ旅行の訪日需要が高まりました。円安も後押しとなり、ショッピングや温泉、地方観光などバランスの取れた旅行目的が支持を集めています。台湾は訪日回数が多いリピーター市場であり、航空ネットワークの拡充が旅行先の分散化にもつながっています。
中国からの訪日外客数は715,700人で、前年同月比22.8%増となりました。国慶節・中秋節の大型連休が10月上旬に集中したことで、連休を活用した訪日旅行が活発に。福州〜成田、上海〜成田間の増便などにより航空座席数が増加したことも大きな追い風となりました。また、クルーズ船の寄港数増加も訪日外客数を押し上げました。経済回復や円安の影響により、日本旅行のコストパフォーマンスが再評価され、買物・グルメ・温泉といった多様な目的での訪日が進みました。依然としてビザ要件などに制限はあるものの、段階的に回復基調が強まっています。
香港からの訪日外客数は196,000人で、前年同月比1.4%減となりました。クルーズ船の寄港など一部プラス材料はあったものの、前年は中秋節が3連休だったのに対し、今年は連休とならなかったことが需要減少に影響しました。香港は週末旅行や連休利用の短期旅行が主流であり、祝日や天候の影響を受けやすい市場です。連休のタイミングがずれたほか、競合となる他の近距離海外旅行先の復調もあり、訪日需要が分散したと考えられます。円安による訪日コストの低下が継続する中で、今後は旅行時期に合わせたプロモーション強化が求められます。
タイからの訪日外客数は125,900人で、前年同月比4.8%減となりました。バンコク〜羽田間の増便などにより航空座席は拡充されたものの、経済の不透明感による旅行控えの傾向が続きました。タイ市場では例年10月から年末にかけて旅行需要が高まりますが、2025年は祝日やスクールホリデーのタイミングと旅行機運の合致が弱かったため、前年を下回る結果に。訪日意欲自体は根強いため、今後の経済動向と航空供給の維持が鍵となります。
シンガポールからの訪日外客数は65,700人で、前年同月比4.5%減となりました。祝日やスクールホリデーの影響で旅行需要は徐々に高まりつつある一方で、一部路線の減便により航空アクセスに制約が出たことが訪日数に影響しました。高い旅行頻度とリピーター率を誇る成熟市場であり、円安による割安感も引き続き魅力となっています。今後の座席供給の改善が安定成長のポイントとなるでしょう。
マレーシアからの訪日外客数は57,800人で、前年同月比4.9%増となり、10月として過去最高を記録しました。マレーシアリンギットの為替環境や中国への旅行需要などの競合要因がある中、祝日やスクールホリデーの影響で訪日需要が上向きました。円安と相まって、ファミリー層を中心とした訪日旅行が堅調に推移。成熟市場としてリピーター向けの地方体験や文化消費型観光が浸透しつつあります。
インドネシアからの訪日外客数は53,400人で、前年同月比23.6%増となり、10月として過去最高を更新しました。年末に向けた旅行意欲の高まりに加え、円安や日本人気の継続が背景にあります。インドネシア市場では富裕層や若年層を中心に訪日旅行が一般化しており、クルーズや地方観光への関心も高まっています。航空座席の安定供給が成長を後押しする鍵となります。
インドからの訪日外客数は29,400人で、前年同月比35.4%増となり、10月として過去最高を記録しました。ヒンドゥー教の新年に合わせた休暇やスクールホリデーが渡航意欲を高め、デリー〜羽田、ベンガルール〜成田の増便や経由便の利便性向上が訪日を後押ししました。インド市場は今後も中長期滞在型・地方志向の旅行ニーズが高まると見込まれます。
アメリカからの訪日外客数は335,700人で、前年同月比20.6%増となり、10月として過去最高を記録しました。紅葉シーズンを前にしたタイミングで、航空座席数が前年よりも増加し、訪日需要を大きく押し上げました。継続的な訪日人気に加え、円安による割安感が根強い旅行意欲を支えています。アメリカ市場ではクルーズ旅行の需要も回復基調にあり、都市観光から自然体験、文化体験まで多様なニーズに応える形で訪日が進んでいます。1人あたりの滞在日数が長く、消費額も大きいため、訪日旅行全体の経済効果への貢献度が高い市場です。
カナダからの訪日外客数は73,700人で、前年同月比10.8%増となり、10月として単月過去最高を更新しました。秋は訪日需要が高まるシーズンであり、継続する日本人気に加え、円安の影響で旅行費用の割安感が強まりました。航空便数は前年同月と比較して減少していたものの、堅調な訪日需要が維持されました。カナダ市場は自然体験や地方観光に対する関心が高く、北海道や中部地方などを訪れる旅行者が多い傾向があります。長期滞在志向の高い層が中心で、特に文化や食に関心を持つ富裕層を中心に支持を集めています。
オーストラリアからの訪日外客数は96,200人で、前年同月比6.7%増となり、10月として過去最高を記録しました。前年同月と比較して航空座席数は減少したものの、スクールホリデーや継続的な日本人気が訪日需要を後押ししました。特に紅葉や地方観光を目的としたファミリー旅行や若年層の訪日が増加しています。円安も背景にあり、コストパフォーマンスの良さが訪日を後押ししています。オーストラリア市場は例年秋〜冬シーズン(南半球)に訪日が強いという特性を持っており、長期滞在や地方体験型旅行のニーズが高い点も特徴です。今後は航空供給の回復がさらなる訪日者数の伸びにつながると期待されます。
英国からの訪日外客数は63,300人で、前年同月比22.6%増となり、前年を上回る結果となりました。10月中旬からのスクールホリデーと、中国・香港経由の経由便の多様化が訪日意欲を喚起しました。円安による旅行費用の割安感もあり、地方観光や文化体験を求める旅行者が増加傾向です。欧州圏では1人あたり支出額・滞在日数ともに長いため、インバウンド消費全体への貢献度も高い市場です。
フランスからの訪日外客数は58,200人で、前年同月比17.8%増となり、10月として単月過去最高を記録しました。若年層を中心に訪日旅行の人気が回復しており、スクールホリデーの影響も訪日意欲の後押しに。日本文化・食・自然体験など多様な目的での旅行が進み、訪日先の分散化も進展しています。フランスはリピーター層も厚く、航空アクセスのさらなる向上が期待されます。
ドイツからの訪日外客数は56,000人で、前年同月比29.2%増となり、10月として過去最高を記録しました。祝日や10月中旬からのスクールホリデーにより、長期滞在型の旅行需要が活性化。加えて、経由便の選択肢増加や訪日旅行の回復基調が背景にあります。欧州の中でも特に日本に対する関心が高く、自然・伝統文化・温泉など多彩な旅のニーズに応えられる市場として注目されています。
イタリアからの訪日外客数は29,400人で、前年同月比17.3%増となり、10月として過去最高を記録しました。航空座席の増加と経由便の多様化が訪日旅行を後押ししました。秋は通常旅行需要が落ち着くタイミングながら、日本人気の継続と円安の効果で訪日旅行が堅調に推移しています。イタリア市場では食文化や伝統体験への関心が強く、地方への誘客にもつながりやすい傾向にあります。
スペインからの訪日外客数は28,700人で、前年同月比22.7%増となり、10月として過去最高を記録しました。航空座席の増加や経由便の多様化が旅行機会を広げ、特に若年層を中心とした個人旅行が好調でした。スペイン市場では日本文化・アニメ・食・自然体験といった多彩な訪日動機が存在し、今後さらに安定した伸びが期待されます。
中東地域からの訪日外客数は27,900人で、前年同月比33.8%増となり、10月として過去最高を記録しました。2025年10月上旬〜中旬にかけてイスラエルにおいてユダヤ教の祝日が複数回あったことが旅行需要の高まりにつながり、加えて直行便の増加も訪日を後押ししました。中東市場では富裕層を中心に日本の治安や文化への評価が高く、長期滞在や高付加価値型旅行のニーズが根強い傾向があります。さらに円安の進行により、日本旅行のコストパフォーマンスの良さが認識されやすく、他の旅行先との競争力も強まりました。今後はビザ要件の緩和やハラール対応など、受け入れ環境の整備が成長の鍵となるでしょう。
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