日本政府観光局(JNTO)が2025年10月15日に発表した「2025年9月訪日外国人数*(推計値)」は326万8,800人となり、前年同月比13.7%増で、9月までの累計では3,165万人を超え、過去最速で累計3,000万人を突破しました。
夏場は一部市場で需要が落ち着く時期ですが、スクールホリデーに合わせた訪日需要の高まりが続き、中国、台湾、インドネシア、ベトナム、米国、ドイツなどを中心に訪日外国人数が伸びたことが8月の押し上げ要因となりました。台湾やスペインで単月過去最高を更新したほか、韓国や中国、米国など18市場で9月として過去最高を記録しました。
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訪日外国人数を地域別で見てみると、多い順に
となりました。
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2025年9月の韓国からの訪日外客数は670,500人で、前年同月比2.1%増となりました。前年は9月中旬に秋夕(チュソク)連休があったのに対し、2025年は10月上旬にずれたため、連休による訪日需要の集中は限定的でした。それでも清州~北九州間の新規就航や仁川~成田間の増便など航空座席数の増加が寄与し、9月としては過去最高を記録しました。韓国では短期旅行志向が強く、航空路線の利便性が訪日需要を左右します。円安傾向も続いており、ショッピング目的の訪日が底堅く推移しました。一方で、他の東アジア地域と比較すると伸び率は控えめで、レジャー先の多様化や国内旅行回帰の動きが見られる点も特徴的です。
台湾からの訪日外客数は527,000人で、前年同月比12.0%増となり、9月として過去最高を記録しました。台風18号の影響で一部便の欠航があったにもかかわらず、地方路線の拡充により航空座席数が増加しました。特に台北や高雄発の地方空港便が堅調に推移し、旅行先の分散化が進んでいます。9月下旬の3連休も訪日需要を後押しし、家族旅行や友人同士のグループ旅行が増加しました。円安も追い風となり、買い物目的の旅行が引き続き高い人気を保っています。台湾は安定したリピーター層を持つ成熟市場であり、航空供給の充実と為替効果が相まって、堅調な回復基調が続いています。
中国からの訪日外客数は775,500人で、前年同月比18.9%増となりました。前年は9月中旬に中秋節があったのに対し、2025年は10月上旬となったため大型連休需要の前倒しはなかったものの、航空座席数の増加が需要を押し上げました。特に塩城~関西間の増便や北京~神戸間のチャーター便運航など、地方空港を活用した新路線展開が奏功しました。加えてクルーズ船寄港の増加も訪日客数を押し上げています。中国では経済の回復基調に伴い、海外旅行需要が広がる中で「円安による割安な日本旅行」の人気が再燃しており、買い物・グルメ・温泉など幅広い目的での訪日が進みました。台風18号の影響で一部便が欠航したものの、総じて好調な結果となりました。
香港からの訪日外客数は149,500人で、前年同月比12.2%減少しました。前年は9月中旬に中秋節があり訪日旅行が活発化していたのに対し、2025年は10月上旬にずれたことから時期的な需要が落ち着きました。さらに、台風16号および18号の影響により航空便の欠航が相次ぎ、渡航機会が制限されたこともマイナス要因となりました。香港市場は短期旅行が中心で、天候・連休の動きに敏感です。円安による訪日コストの低下は続くものの、安全性やアクセス性の問題が優先され、前年同月を下回る結果となりました。今後は台風シーズンを避けた安定期の誘客施策が鍵になると考えられます。
アメリカからの訪日外客数は224,700人で、前年同月比17.1%増となり、9月として過去最高を更新しました。直行便の増加に加え、訪日旅行の人気が継続的に高いことが背景です。米国市場では紅葉シーズンなど観光ハイシーズンを避けた「オフピーク旅行」のニーズが拡大しており、9月は混雑回避と円安による割安感から旅行需要が底堅く推移しました。特に都市観光と地方体験型旅行の両方が人気を集め、アメリカ人旅行者の滞在日数・消費額の高さが全体の旅行消費拡大にも寄与しました。航空座席の供給力向上が訪日需要を支え、過去最高を更新する要因となりました。
カナダからの訪日外客数は55,600人で、前年同月比11.2%増となり、9月として過去最高を記録しました。前年と比較して航空座席数は減少したものの、継続的な訪日人気と円安効果が需要を下支えしました。カナダ市場は季節による変動が比較的少なく、長期休暇を利用した旅行者が多いため、9月のオフピーク期でも安定した需要が見られました。また、紅葉や文化体験、地方観光など自然志向の旅行が人気で、地方空港を活用した旅程が増えています。高所得層を中心に、日本の安全性や食文化への関心も高く、堅調な伸びを維持しました。
豪州からの訪日外客数は96,600人で、前年同月比12.8%増となり、9月として過去最高を記録しました。減便の影響で座席供給は前年より減少したものの、9月下旬から始まったスクールホリデーが訪日需要を大きく押し上げました。特に北海道や長野などでのスキー・秋観光を目的とした旅行者が増加しました。円安も影響し、旅行コストが相対的に低下したことで、長期滞在型の訪日旅行が人気を集めました。オーストラリアはもともと秋冬シーズンに強い訪日需要を持つ市場であり、今回の結果はその季節特性を反映した自然な上昇といえます。航空供給が回復すれば、さらなる拡大が見込まれます。
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